いつかあなたに還るまで

だからなのかもしれない。
ずっとずっと自分でも不思議だった。
彼が見ているのは自分ではない。きっと「西園寺の孫」としての自分。
そこはかとなくそれを感じているにもかかわらず、どうして彼と会おうと思うのか。会ってみたいと思うのか。こうして放っておけないのか。

それはきっと彼の中に「孤独」を感じるからだ。

誰をも寄せ付けない空気、見た者を凍り付かせてしまうような冷たい眼差し。
それでいて獲物を捕らえるような野心に満ちた瞳。
挙げればきりがないほど不安要素はある。
けれど、それ以上に彼の全身が「寂しい」と言っているように思えてならないのだ。

どうしてかなんてわかりっこない。
ただ彼の全てでそう感じるから。それ以外に説明のしようがない。

そしてそんな彼の孤独に寄り添いたいと思う自分がいるのだと。
わからないことばかりの中、はっきりしているのはそれだけだった。

…そう、私は彼を放っておけないのだ。

それを恋心というのかはまだわからないけれど、ふとした瞬間垣間見える彼の優しさに触れたとき、言葉にできないほど胸が苦しくなる。


もしその苦しさこそが恋なのだとしたら、私はきっと____


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