いつかあなたに還るまで

「人を好きになるということは楽しいことばかりではないかもしれません。ですがだからこそ愛おしくもある。私は志保様にそういう気持ちをもっともっと知って欲しいと思ってます」
「宮間…」

いまだ祖父との関係はぎこちないままだ。
それでも、祖父には感謝してもしきれないことが一つだけある。
それは宮間という人間に出会わせてくれたことだ。祖父が偶然出会い、その可能性を見出し、そして自分の元へと連れて来てくれたことは、どんな言葉をもってしても言い表せないくらいに幸運な出会いだった。

「そんな恋する志保様にお知らせです」
「え?」
「あなたの想い人から先程お電話がありました」

「…えっ?」

嘘? 何故? だって、携帯には何も___

「何度か携帯に連絡したものの繋がらないので伝言をお願いしますと言付けされました」
「……えぇえっ?!!」

ガバッとポケットを探ってみれば…いつも忍ばせているはずの携帯がない。どうやらぼんやりし過ぎるあまり部屋に置きっ放しにしてしまったようだ。

「た、大変っ…!」
「では霧島様からの伝言をお伝えしま____」

「ありがとう、宮間っ! 私部屋に戻るわねっ!!」

最後まで聞くことなくバタバタと出て行った志保に唖然としながらも、

「…ふふ、そうやってお嬢様であることなど忘れてしまってください」

既にいなくなってしまった我が主へと優しく語りかけるのだった。

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