いつかあなたに還るまで
そうして隼人が日本を旅立ってもうすぐで一ヶ月。
帰って来る日を今か今かと指折り数える日々だった。
「るーうちゃん!」
扉から顔を覗かせた志保に、絵本を読んでいた瑠璃の顔がぱっと花開いた。
「しほおねえちゃん! きてくれたのっ?!」
「もっちろん! 今日はおりがみ持って来たよ!」
「うわぁ~っ、ありがとうっ!!」
ほっぺをほんのり染めながらほっくほくの笑顔を弾けさせる瑠璃に、志保も体中が喜びで満たされていく。
あの日の無理が祟った瑠璃は、結局長期の入院が必要となった。
こうしてお見舞いに来る度に、あの日の出来事が嘘のように彼女は嬉しそうに笑ってくれる。その心の中では想像がつかないほどの葛藤があるに違いないのに、それをおくびにも出さずに。
こんなに小さいのに、こうして目の前で見せる笑顔はあどけない子どもそのものなのに、心だけがどんどん大人になっていく。
それが悲しかった。
母親があの日のことをどう受け止めたのか。今後の彼らがどのような未来を辿っていくのか、それは誰にもわからない。
自分にできることはこうして変わらずに会いに来ること。
そして、どうかこの子の未来が笑顔で溢れたものでありますようにと願うことだけだ。