いつかあなたに還るまで

ぶるぶると全身が震える。
噛みしめた奥歯がカタカタと音を鳴らすほどに。
体中から血の気が引いていき、凍り付くほどに体温が下がっていく。

「志保様は会長にも、そしてあなたにも絶対に言わないでくれと懇願されました。会長はともかく、私はあなたには伝えるべきだと言いました。ですがお子様を失った後、泣くこともせず、悲しむこともせず。まるで抜け殻のように茫然自失としていた志保様が、どうか言わないでくれと必死に言い募るその姿を…無視することなどどうしてもできませんでした」

彼女は一人、どんな想いでそんなことを____

「それ以降志保様がお子様について話されることは一度もありませんでした。私に対してですら、ただの一度も弱音を吐くことなく、全てを一人で乗り越えようとなさっていたんです」
「 ____ 」

「そうして彼女は一つの決断をしました。日本を離れ、一人で成長するための時間が欲しいと。ここにいてはどうしても甘えが出てしまう。西園寺の孫娘ではなく、一人の人間として強くなりたいと。難色を示す会長に何度も直談判し、最後にはその気迫に会長が折れる形となりました。それほどに志保様の決心は固いものだったんです」

「…いつ、まで…」

「それはわかりません。きっと志保様自身もわかっていないことでしょう。心配にならないと言えば嘘になりますが、そうすることが今の志保様の生きる糧になるのならば、私はいくらでも背中を押したいと思いました」
「……」

あまりにも一度に知らされた事実に、激しい目眩と動悸がする。

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