いつかあなたに還るまで
毅然と答えたその言葉に染谷の顔に明らかな不快の色が滲んだ。
一方で志保は驚きに目を見開いたまま固まっている。
「仕事も私なりに誇りをもってやっているつもりです。もしこんな私で嫌だと言われればその時には潔く身を引きます。ですがもしもそのままの私でいいと言ってくださるのならば…こうして彼女のお傍にいられたらと思っています。…ね、志保さん?」
「___え? …は…はいっ…」
突然振られたことに激しく動揺しつつも真っ直ぐなその言葉に本能で喜んでいる自分がいて、志保は考えるよりも先に頷いていた。顔を真っ赤にしながらコクコクと首を動かす志保に満足そうに微笑むと、隼人は再びその視線を染谷へと戻す。
男の表情は不快を通り越して憤りに満ち溢れていた。今にも殴りかかってくるのではないかと思えるほどに。
だがそれを目の前にしても、隼人の笑顔は決して崩れることはない。
「___ふん、所詮似た者同士、同じレベルの人間が集まるということですね。あなたはもう少し賢い女性かと思っていましたが…非常に残念だ。これから先の西園寺グループがどうなることかと案じられますが…まぁそれも含めてあなた自身の選んだ道と言うことですね。あぁ、間違っても後になって泣きついてくるのはご免ですよ? それじゃあ似た者同士でごゆっくり」
ペラペラと捲し立てるように吐き捨てると、最後に下等生物でも見ているかのような視線を投げつけて染谷は会場内へと消えていった。