音楽が聴こえる
お腹に跳ねるようなドラムの音を感じながら、人の少ない壁側を選んで歩いた。
今日のライヴは対バン形式で、もう既に2組目のバンドの演奏も佳境らしい。
ステージに立つバンドの演奏と客の歓声が入り混じり、ライヴハウスの空気全体が熱く揺らめいているみたいだ。
本来は3組の出演だったところを悟が『SPLASH』も捻り混み、彼等はこの次、3番目の演奏順になる予定だ。
あたしは、この間と同じ様にカウンター近くの壁際の隅に身を寄せ、誰も座ることのない椅子に座った。
見回りじゃなくて乞われて来ている、とは言え、あたしが教師の立場であることは変わりない。
この前にいる客の中には、うちの高校の生徒も含まれているはずで。
……此処に来ている子達は、彼らの音楽に何をみてるのだろうか?
今まであたしの頭の中では、個人がどうとかよりも『生徒達』って箱の中に括って見ていた。
そんなの斉賀達と関わらなければ、気付きもしなかった感情だ。