音楽が聴こえる
「ジュン君、無謀だよ」

「悟さん、やっぱ迫力だなー。超びびったわー」

斗夢と山路が各々の感想を口にして、俺を見る。

謙二は呆れ顔で、首を振った。

「……んだよ。お前も言いたいことがあるなら言えば良いだろうが」

胸ポケットから眼鏡を取り出して掛ける謙二は、何も言わない。

「俺、謝んねぇよ?」

ライヴで集中力を欠いたことも、悟さんにあんな口を聞いたことも 。

「そんなこと言ってる時点で、気にしてるって告ってるのと同じだ」

謙二の冷静な突っ込みが余計に痛い。

感情的に罵られたなら、言い返せるのによ。

文句でも注意でも、何か言われた方が救われる。

こいつだって分かってるくせに。


あーあ。
……腹ん中がジクジクする。

「…………お疲れ」

俺は自分のギターケースを担いで、とっととその場を逃げ出した。

くだらない感情でぶち壊したモノに背を向けて。

謙二が背中越しに何か言った気がしたけど、俺の耳には届かなかった。

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