音楽が聴こえる
胸元が大きく開いたカットソーからは、その大きさを安易に想像出来る、谷間が拝めた。

「じゃ、ジュンヤが遊んでよ。ホテルでも行く?」

媚びるような梨花の視線に、溜息を吐いて歩き出した。

「……そんな気分じゃねぇ」

「ジュンヤ、最近冷たーい。バンドに力入れてるのは知ってるけど」

拗ねた顔は昔なら、中坊なら可愛いと思えた顔だ。

「そう思うんなら放って置いてくれよ」

「でも、今、私のこと助けてくれたじゃない」

「お前がぐいぐい引っ張ったから助けただけだ。前も言ったけど、お前が誰に股開こうが、興味ねぇし」

梨花のばさばさの睫毛が揺れたけど、俺は突き放した。

「ジュンヤの馬鹿! 超ムカつく!!」

「……馬鹿で結構。もう俺に絡んで来んな」

梨花に対して、持っちまった嫌悪の情は消えねぇ。

香田と梨花が同じ類いの女だとは思っていねぇけど。

悟さん以外の男に手を引かれ消えた香田と、そうやって中学の頃、俺を置いて家を出て行った母親がダブって見えた。

それが何よりも堪えた。
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