音楽が聴こえる
「あーっうっせぇっっっ!!」

斉賀が突如、叫ぶようにあたしの前へ詰め寄って来た。

「地味先のクセに指図すんなっ」

ツバまで飛んできそうな斉賀の勢いに、高城はヤツの腕を押さえた。

「……斉賀クン。私のは提案です。指図ではありません」

斉賀は腹立ち紛れに、あたしが手にしていた文庫本を取り上げ、叩き付けた。

文庫本はバンッと乾いた音を立てて床に落ちる。

「うっせぇっ、目障りなんだよっ!! 興味がねーからって、こんな本持ち込みやがってイラつくんだよっ」

あたしは体が揺れた衝撃でずれた眼鏡のフレームの位置を直しながら、立ち上がった。

「おい、ジュン?! 先生に何言ってんの」

「お前も地味先なんかになついてんじゃねーよっ」

ったく。
だからガキンチョは嫌いなんだ。
すぐに八つ当たりするし、その割りには大人並みの腕力とか持ってるし。

いい加減、頭に来るんだってーの。

「……あたしが本読んでるのは、あんたの歌を聞きたくないからだよ。下手くそ」
< 38 / 195 >

この作品をシェア

pagetop