音楽が聴こえる
噛み付くようなあたしの言葉に、斉賀は呆気にとられた。

その証拠にアホみたいに口をパクパクさせて、まるで酸欠金魚だ。

「て……てめぇっ」

「……あんたのサビの高音部、半音フラットさせるのは味なんだろうけど、上手く出来なきゃ単なる音痴だから」

あたしは拳で斉賀の胸元を突っついた。

「人に八つ当たりするくらいならカリン茶でも飲んで体調ぐらい整えなさいよ。自己管理出来ないヤツが練習したって時間の無駄。と、言うことで高城君、やっぱり10分以内に終了して」

あたしは言いたいことを言って、視聴覚室のドアに向かって歩き出した。

扉の前でくるり、振り返るとびっくりしてるのは、斉賀だけでないことはに気付く。

皆の視線があたしに向いていて、どれも同じ表情を浮かべているのだ。

「……斉賀君。今のが指図ですから」

ドアを静かに閉め、薄暗くなった廊下を歩き出す。

……やっちゃった。

だから、嫌なんだ。
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