音楽が聴こえる
「今日は 皆が噂してんだよなー、センセーのこと。眼鏡外して小綺麗にしてるってよ」

小綺麗じゃないわっ、あたしは童顔なんだ。

斉賀は机に肘を付いて、あたしの顔をじいっと見た。

「……もしかしてさあ、俺が地味先って連呼しちまったから?」

彼は少し垂れた目を細め、大きめな口の端をキュッと持ち上げる。

「はあ???」

キミハナニヲイッテルノ?

「噂では、センセーがバンドの顧問なんて、あり得ねぇことしだすわ、遅ればせながら色気を出し始めたことになってんだわ」

色気って……高校生のガキに言われたくないわっ。

斉賀が退きそうに無いので、彼がこの間倒した隣りの席に座った。

「くだらない。眼鏡はちょっと……修理に出しただけだし」

マジで笑えん。帰りに絶対悟の部屋から取って来よう。

あたしはコロッケパンにかぶりついた。

「で、君は何しに来たの?」

「これ」

ああ、私の。妖怪辞典。

「ああ、君が飛ばした本ね」

「趣味悪くね? 俺達の歌聞きながらってさぁ」
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