音楽が聴こえる
こんな自分都合な理由で教師になんてなっちゃったあたしでも、決して手を抜いているつもりは無い。

ちゃんと授業の準備だってするし、生徒の質問にだっていつでも答えられるよう、努力してるつもりだ。


……に、したって。
コイツはここで何してんの。

朝帰りの所為でお弁当を作れなかったあたしは、学生に混じって購買でパンを買う羽目になった。

暑苦しい熱気を感じながら、コロッケパンとホイップパンを選んで教務室へ帰ってくると、訪問者・斉賀があたしの机に突っ伏して寝ていた。

長い睫毛を閉じて寝息を立てている斉賀は、無防備な少年に見える。

実際は短気で、すぐ牙を剥くけど。


あたしは、彼の座る椅子を足でガシガシ揺らした。

「斉賀クーン、私の席なんですけど」

「……んー。乱暴すぎ」

「教室に帰って寝なさい」

「あそこは煩くて寝らんねえ」

ここも寝るところじゃないわっ。

「何か用でしょうか、斉賀君」

「……何だよ、あんなタンカ切っといて、今更敬語とか」

あたしが腕組みして奴を見てると、不意に斉賀は笑った。
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