音楽が聴こえる
『あ……。ごめんなさいね』

お邪魔しちゃって。
なーんて、ね。

さっと身を翻した朝田梨花の後ろ姿に、心の中で舌を出す。

斉賀は鈍い足取りで、階段を上がってきた。

『センセー、手伝う』

彼も腰を屈め、派手に散らかったノートを一冊ずつ拾う。

『……君さ、ここは無いでしょ。他の先生方に見られたら、処分対象よ』

『やっぱ、見てたのかよ』

斉賀は嫌そうな顔をした。

『あのねー、場所をわきまえなさいって話しです』

『……見てたんだったらよ、しかけたの俺じゃねーの分かんでしょ? センセ』

『乗っかったら一緒だし』

あたしの言葉に斉賀の目がギョロリと動く。

『ちぇっ、もういーよ』

拗ねたように口を尖らせた斉賀は、黙々とノートを拾い上げ始めた。

『……女ってさ……訳わかんねぇよな』

『お互い様です』

『……センセーも』

同じ高さで目線が合い、斉賀は顔をフイと背けた。
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