White Magic ~俺様ドクターの魔法~
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「その時の睦美のまっすぐな瞳が忘れられへんかった。
希望に満ち溢れていそうな瞳が羨ましかったんや」
イスの背もたれにもたれ、思い出すように少し遠い目をしている彼を私は見つめた。
「俺さ、代々医者の家系やからって、医者になったところがあってさ、毎日何のために仕事をしてるんやろうって思い始めてた時やったから、睦美が眩しかった。
あんなに前を向いて歩いている子を見たことがなかったから、正直忘れられへんかった。
だから、5年も経って会うことができたことに驚いた。
それと・・・・・・睦美の瞳がまだ輝いていたことに安心した」
もう限界です・・・・・・恥ずかしすぎます・・・・・・穴があったら入りたい。顔はきっと真っ赤だろう・・・。
俯く私に彼は再び口を開いた。
「睦美、顔を上げて・・・・・・」
そう促され、私は顔を上げると、目の前には彼の手の平に乗っている箱が目に入った。
これって・・・・・・もしかして?
「睦美、受け取ってくれる?」
目の前の箱の蓋を開け、中身を取り出すと、「はい、左手出して」と真顔で言われた。
言われるままに、私は左手を出すと、彼の手のひらに乗せた。
彼の手は少し汗ばんでいるようだった。
いや、私の手がそうなのかもしれない。それだけ緊張していた。
「睦美・・・・・・・」
左手の薬指にゆっくりとはめられたのは、キラキラと輝く指輪だった。
「これ・・・土曜日に渡すつもりだったんやで」
土曜日って・・・瞬さんの家に行った日・・・。
そっかぁ、あの後話してくれようとしてたんやね。
「ごめんね」
「睦美は悪くないよ。俺が悪いんや。睦美が悲しむ顔を見たくないとか思って話されへんかったのに・・・そのせいで余計に睦美を悲しませることになったんやから」
申し訳なさそうにしている彼を見ていると私の胸まで苦しくなってきた。
「そんなこと思わんといて、お願い」
泣き出しそうになるのをこらえて、彼に言うと、彼は「ありがとう」と下唇を噛み締めながら言ったのが印象的だった。
「・・・・・・それにしても、みんなの前であんなこと言わんでいいやん!!」
そう、食堂でみんながいるところで言うなんて・・・・・・。
「あれか・・・・だってさ、ああでもして押さえ込まないと、睦美は話にも応じてくれなさそうやから・・・」
あぁ、全てお見通しですか?
「私の取り扱い方よくわかってるやん」
「当たり前や」
目を合わせると、2人で笑いあった。