甘いヒミツは恋の罠
「結局、的を得た答えは返ってきませんでしたけど、デザインができないって言ってました……私にはどういうことかさっぱりわからなくて、他の社員のひとたちは何か知ってるみたいなんですけど、知らないのが私だけな気がして……なんだか仲間外れになってるみたいでちょっとモヤモヤしてたところだったんです。すみません、せっかくお食事に誘っていただいたのに、なんだかお気を遣わせてしまったようで……」


 こんなことを大野に話したところで、きっと迷惑だったに違いない。紅美は鬱憤を吐き出すだけ吐きだすと、今度は後悔の念に囚われた。


「そっか……でも蜜の味は、自分で確かめて堪能したほうが面白いよ」


「え……?」


(蜜の味……?)


 一瞬、大野の言っている意味がわからなかったが、要するに自分で解決しろということなのだろう。


「そう、ですよね……すみません。今の、忘れてください」


(どうしてこんなに朝比奈さんの秘密が気になるの……?)


 秘密は秘密にされるほど知りたくなる。紅美はその秘密が放つ甘い香りに流されるように、いつまでもルチアシリーズのことが頭から離れないでいた――。
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