甘いヒミツは恋の罠
「お前、そんなこと恥ずかしげもなくよく言えるな。愛だの恋だの……世の中で一番くだらない感情だ」


「そ……んな」


「まぁ、恋愛ごっこでも暇つぶしにはなる。俺を軽蔑したか? お前が明日から怖じ気づいてここへ来なかったら、それが俺に対するお前の答えってわけだ」


 なにもかも投げ捨てるかのような朝比奈のぶっきらぼうな口調に、紅美はなにか裏があるような気がして、沸き起こる怒りを朝比奈にぶつけることができなかった。


「別に……怖じ気づいてなんかいません。ただ、朝比奈さんがかわいそうな人だって思っただけです」


「なんだって?」


「失礼します」


 ギロリと横目で鋭く睨みつけられたものの、紅美は動じることなく頭を下げると部屋を後にした。
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