甘いヒミツは恋の罠
「さぁて、次はあなたの嫌いなアルチェスに行かなきゃ」


 葵が腕をまくって時計を見ると、忙しくバッグを手に取った。


「相変わらず君も浮気な女だな」


「フリーバイヤーの特権でしょ? それに明日から買い付けに海外に一週間くらい行ってくるから何かあったらメールして」


 そう言って部屋を出ようとした葵が足を止めた。


「そういえば、皆本紅美だっけ? デザイナーの……ちょっとは頑張ってるみたいだけど、まさかあの子が神楽坂涼子の孫娘だったなんてね……意外」


「まぁ、いずれ彼女も僕のものになる……そして社長夫人として改めて君に紹介するよ」


 大野が口を歪めて笑うと、葵はひとりで妄想に浸ってるその様子に呆れてため息をついた。
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