甘いヒミツは恋の罠
「まぁ、そうと言いつつ……汚れた心を清めに来た。自分自身を見つめ直すためにもな」


「どういう……ことですか?」


「大野から全部聞いたんだ。ったく、それ聞いたら長年俺が憎んでいた過去のことなんて、もうどうでもよくなった」


 朝比奈がソファにどかりと腰を下ろし、両手を頭の後ろで組む。


 パチパチと薪が燃える音だけがして、それが不思議と心地よさをもたらした。


「ここへ来た当初、指輪のデザインをしようとしたけどペンを握るだけでも手が震えた。最近、デザイナーとしての仕事よりも、店長としての職務の方がメインになってたからな……腕が鈍った証拠だな。デザイナー引退かも」


 朝比奈は自嘲するように小さく笑った。


「そんな! そんなことありません。だって、このデザイン画、素敵じゃないですか、何回も考え直して描き直したんだなってわかります。無理しないで、ありのままの自分のデザインを紙に描ければ、それでいいと思います」


「なんだそれ……お前のばあさんの受け売りか?」


「そ、そんなところです……」


 小さい頃、思うように絵が描けなくて泣いていた時、祖母に言われた言葉を思い出した。
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