甘いヒミツは恋の罠
 朝比奈は毎日、三~四時間は本店内にあるアトリエにこもって作業をしている。


 紅美は、先日見た朝比奈の真剣な横顔が忘れられないでいた。自分のデザインと向き合って、真剣そのものの表情は、紅美を胸を高鳴らせた。けれど、そうかと思えば店長室から時々、女がいやらしく笑う声が聞こえてきたりもする。


(真面目な人なのか、ただの遊び人なのか……よくわからないよ)


 一週間に最低三人は違う女を連れて歩いているのを見かけると、紅美は朝比奈に対して困惑するのだった。


(最低上司――)


 そんな遊び人の朝比奈が、心奪われるようなアクセサリーを作っていると思うと、どうしても複雑な気持ちにさせられる。紅美は、これから向かう場所にため息をつきながら化粧室を出た。


 その時――。
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