冷たい上司の温め方
数人の新人に健康診断の結果を手渡すと、「ありがとうございます」と言われてうれしくなる。
嫌われ者だと思っていると、こんな些細なことだってうれしいんだよ?
それでいいじゃない。
「すみません。借り上げ社宅のことでお聞きしたいことが……」
「はい。なんでしょう?」
二課の仕事である福利厚生については、素人同然だ。
きちんと答えられなかった私は、「あとで調べて返事をします」と営業部を出た。
『適当にごまかしてはいけない。わからないことはわからないと言えるのが新人の特権だ』と最初に楠さんに強く言われていたことを実践した。
私達の仕事は、誰かの人生を左右するようなこともある。
だからこそ、適当にごまかすことは許されない。
それが、楠さんの信念のひとつだ。
冷たいオトコだけど、そういうところは尊敬できる。