冷たい上司の温め方
山際さんが褒められているのがなんとなく腑に落ちないけど、これで彼女がひとつ勉強できたならそれでいい。
「しっかり指導できたようだな」
おそらく山際さんが先輩社員に尋ねていることが、私の指示だとわかったのだろう。
デスクで書類に目を落としていた楠さんがボソッとつぶやく。
「ありがとうございます」
素直にお礼を述べたけど、なんの反応もなかった。
でも、きちんとわかってくれる上司というのは心地いい。
午後からはまさにシモベの仕事だった。
楠さんに大量の書類を渡され、会社中に配り歩いた。
あの販売促進部にも。
左遷宣告されふたりは、今日はおとなしくしていた。
「おぉ、人事。これ持ってけ」
「はい。お預かりします」