冷たい上司の温め方

「まぁ、いい。採用だ」

「採用?」


いきなり『採用』と言われても、ピンとこない。
試験も面接もしてないし……。

この人、なに言ってるんだろう。


「お前、仕事探してるんだろ?」

「えぇ、まぁ」

「これから会社の概要と待遇の話をする。

お前は雑用係だ。
残業も法に引っかからない程度にはある。

ただし、給料はそれなりに出す。それも実力次第だが」


一方的に採用を決めた楠さんは、人事担当者のように会社の説明を始めた。


だけど、驚いた。
彼が口にした“ダイオー電機”という会社は、私が面接を受けようとしていた会社の親会社だ。

電機メーカーの中堅だけど、最近になって急成長している。
家電を得意としていて、他社が不振にあえぐ中、ヒット商品を連発している。

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