冷たい上司の温め方

ピンと場の空気が張りつめる。
楠さんはやはりクビを宣告するのだろうか。


「ですので、今回は課長から係長に降格していただきます。
それで、納得していただけますか?」


飯田さんが茫然と楠さんを見つめながら、ドサッと椅子に座り込む。

クビは回避したということ?

驚いて楠さんに視線を移したけれど、彼はいつもと変わりなく表情を崩さない。


「あぁぁ、あの……」


飯田さんはしどろもどろになりながら口を開く。



「それでは……残していただけると?」

「次はありません」


ピシャリと言い放った楠さんだけど、その内容は温かかった。


人事に戻ると、淡々と帰る用意をしている楠さんに笹川さんが話しかける。


「飯田さん、変わるでしょうか」

「そう祈ってる」
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