冷たい上司の温め方
「これからは、心を入れ替えて仕事に励みます。どうか……」
まさか、飯田さんから謝罪の言葉が出るなんて思ってもいなかった。
だって、前回は相当怒り狂って、この部屋を出て行ったから。
「長く仕事をしていれば、飯田さんのように気持ちが緩むこともあるでしょう」
「……はい」
楠さんの言葉に、飯田さんは目を伏せる。
「私は朝から晩まで気を張りつめて仕事をせよとは言っておりません。
サイボーグではないのですから、時々息抜きしたって、問題にはしません。
ただ、飯田さんは度を越えていて、しかも年々よくない方向に向かっていました」
「おっしゃる通りです」
飯田さんは落胆した様子で大きく頷く。
「会社としましては、飯田さんが仕事をされていなかった時間分も賃金をお支払いしていましたので、損害を被っているということになります」