冷たい上司の温め方

エレベーターに乗り込むと、私達ふたりだけになった。


「楠さんにだってあるじゃないですか」

「俺はもう……いいんだ。別に、守るものもない」


その言葉に激しく腹がたつ。


「守るものがない? 守ればいいじゃない、私を! 
自分に好意を寄せる女のひとりくらい、守ってみなさいよ!」


なんでこんなに上から目線なのか自分でも説明できないけど、言葉が勝手に飛び出した。

キレられるかもしれないと思った。
だけど、メガネの下の彼の目が、優しい色に変化した。


「そうか。……そうだな。
美帆乃、俺についてこい」

「了解」


うれしかった。
彼がまた『美帆乃』と呼んでくれた。

いや、それよりも……『ついてこい』と言ってくれたことが。

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