冷たい上司の温め方

楠さんの発言に、笹川さんが大きく頷く。

最近険悪な雰囲気のふたりだったけれど、ホントは息がぴったりだ。


今回は、楠さんのお父さんの時とは違う。

あの時は客に対する会社ぐるみの裏切りだった。
今回は痛手を被ったのは、客ではなく会社自体だ。


「それはそうだが……」


部長の苦々しい顔は、私達の緊張をあおる。


「それで、これは……」


部長がデスクの引き出しから退職届を取り出した。


「ご迷惑をおかけしましたので、私は辞めます。
ただこのふたりは、私の指示に従っただけです」


この期に及んで、まだそんなことを!

私は楠さんの隣まで歩み寄ると、口を開いた。
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