冷たい上司の温め方


「いくら首切り屋だからって……なんてことをしたんだ」

「首切り屋、だからです。他にやる人いないですから」


その言葉に隣の笹川さんが、ニヤリと笑った。
私達三人は、今、同じ気持ちだ。


「重役の不正は会社の信頼を失う。
株価だって下がるだろう。
常務ひとりの問題では済まなくなる」

「もちろん、承知しています」

「社内の警告で済ますことはできなかったのか?」


部長は頭を抱えている。


「秘書の竹中が曲者でしたし、社内で告発してもつぶされていたでしょうね」

「しかし……」


楠さんの言う通り、どれだけ証拠をそろえても握りつぶされたらおしまいだ。


「今回、我が社はいわば被害者。
一時的に株価は下落するかもしれませんが、今回の告発でかえって技術があることを証明できるのではと思います」
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