冷たい上司の温め方
「ここで待つ」と言うから驚いてしまう。
このエスカレーターさえパスできれば、下には喫茶店が見えているのに。
「ちょっと待ってくださいね」
元来たコンコースを全力で駆け抜けて、駅員さんを捕まえる。
私にも、時間がない。
「はぁはぁ」
こんな時、ずっとテニスをしてきて良かったと思う。
体力には自信がある。
事情を話して駅員さんと一緒に戻ると、不安そうなおばあさんの顔。
「大丈夫です。あるそうですよ!」
私が思った通り、車いす用のエレベーターが少しわかりにくい場所にあるらしい。
案内役の駅員さんと共に無事に一階にたどりつくと、おばあさんに何度も頭を下げられた。
「本当にねー、最近の若い子は冷たいとばかり思っていたけど、あなたみたいな……」