他人と身内と
「殺すもなにも理由がないからだよ。」


護は少し微笑んだ。


理由がない.........。


「.......じゃあ、聞くけど、SK対処部隊はどうして私たちを襲うの?」


「あいつらもお前と一緒だ。」


一緒?


あんな奴らと?


「SK対処部隊もお前らに家族、友人、恋人を奪われてんだろ。
毎日、毎日。
お前らに斬られた奴にも家族がいるんだよ。」


何も言い返せない。


確かにそうだよ?


でも、でも........先に私たちから希望を奪ったのはそっちじゃない!


「さきに手を出したとか関係ないんだよ。
どこかで終止符を打たないとこの戦争は終わらないんだよ。」


確かにそうかもしれない。


SKもSK対処部隊も誤った道を歩んでるのかもしれない。


でも、私たちは決してやめない。


「命を粗末にするもんじゃない。」


命。


つまりは「心」。


心は変わりやすい。


だから毎日が楽しい。


そっか、「心」って命なんだ。


でも、私たちは戦わなくちゃいけない。


もう理由なんてなくなってしまった。


が。


私たちは屈辱を背負ったままだ。


屈辱を捨てるためには犠牲が必要だ。


その犠牲というのがただSK対処部隊ということだけ。


「私たちは間違えていたのかもしれない。でもね、今更戻れないの。.....ごめんね。」


スッと席を立ち、教室を出る。


護が追いかけてくる。


私は無視して、窓から外に飛び出す。


電信柱の上に飛び移り、護を見下げる。


「では、失礼しますね。
まだ外は明るい。
戦いを公にしたいのなら相手になりましょう。」


即座に赤いパーカーを着て、バンダナを口に巻く。


向こうの方で杏が焦っているのが見える。


ごめんね、杏。


バレちゃった.......。


「待てよ!お前はまだ戦うのかよ!俺の言葉は少しでも響いてないのかよ!!!!!」


「響く?そうですね。少しは響いたんじゃないですかね♪」


護は敵意を見せる。


殺気がすごい。


「戦いますか?」


その言葉を聞いて、護は悲しい顔をした。


「本当に殺る気なんだな....。でも、今戦ったら一般市民に被害が及ぶ。真夜中に相手になってやる。」


護は下から上を睨み付ける。


「分かりました♪
今日は息の切れる戦いができそうですね♪
では、そろそろ野次馬も増えてきたので失礼しますね。」


回りには騒がしい野次馬の塊ができていた。


集まる前にバンダナを巻いておいて良かった。


電信柱を伝っていき、その場を去った。


その日のテレビは


『SK、宣誓布告!?』


というニュースで持ちきりだった。




杏と合流し、護との会話を全て話した。


杏は優しい笑顔を見せて、


「忙しくなりそうだね。」


と一言いった。



真夜中までの時間は長い。


ゆっくり真夜中を待つ。


SK本部は針積めた空気だった。


「今日は仮面野郎が来るんだな。」


空海さんは重い口調で言った。


「だと思いますよ。」


みんなはいつもより丁寧に刃を磨いた。


「.........死ぬなよ。」


空海さんの珍しい弱音にみんなが敏感になる。


「もう、空海さんが弱気になっちゃダメじゃないですかぁ~!
気楽にいきましょーよ!」


優喜は無駄に明るく接する。


いつもなら怒るところだが、今はその明るさが救いになる。


「...そうだな。生きて帰ってこよう。」


空海さんは優しく微笑み、赤いパーカーを着る。


みんなも赤いパーカーを着て、バンダナを巻く。


右手に鋭い刃物。


左手には護身用の刃。


両足に拳銃。


「さぁ、行こうか。」


空海さんの合図で全員が真夜中の戦闘へ足を踏み入れた。
< 20 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop