他人と身内と

護VS喜々

「許さない.........!」


護を睨み付け、刃を構えた。


「姉ちゃん落ち着け!!!!!!空海さんはまだ息してる!頭に血が昇ってちゃダメだ!」


優喜の言葉すら、頭に入ってこない。


「姉ちゃん落ち着けよ!!!!!」


その瞬間、



パンッ!



鈍い音がし、喜々のほっぺに痛みが走った。


杏が喜々のほっぺを叩いた音だった。


「落ち着いて。喜々がそんなんじゃ怪我人が増えるだけでしょう?」


いつも温厚で怒ることなんて滅多にない杏。


「...........ごめん。」


杏の一発で目が覚めた。


「聞いて?空海さんは生きてるから!冷静になって戦うのよ。」


真っ直ぐ喜々を見つめる杏の目は少し潤んでいて、手が赤くなっているのが分かる。


「ありがとう。」


杏に微笑みかけ、護の方を向き直す。


「護、私が決着つけてあげるわ。」


両者は刃を構えた。


「喜々、手は抜かないぜ。」


「もちろん。」


二人の刃は混じりあい、互角の戦い。


「........?」


しかし、違和感を感じた。


護の力が少し弱い気がする。


おそらく、さっきの空海さんの一騎討ちのダメージが大きいらしい。


よく見ると、脇腹は赤く染まっていた。


「.....っ!」


護が刃を弱めた。


傷が痛んでいるようだ。


その隙をつくように私は護の足を崩し、押し倒す。


首に刃をあてる。


「.........っ!」


護は抵抗しようとしたが、さっきアキレス腱を切ったからもう歩けないはずだ。


「喜々、強くなったな。"あの頃"はまだまだ甘かったのに。」


いつの話?


あ....そうか。


護は私がSKって最初から気づいてたんだ。


あー、懐かしいなぁ。


一番最初に護と戦ったときはぼろ負けして逃げたんだっけ。


"あの頃"ってその時のこと言ってるのね。


でも、もう昔の私じゃない。


刃を高々とあげ、一気に首に落とす。


「..........っ!」


沈黙が流れた。


そして、音もなく涙がこぼれ落ちてきた。


「......殺せるわけないじゃない.......」


首まであと数ミリというところで止まった刃が震えだした。


「なんで....」


「殺せないよ.....!護は幼馴染みで昔から一緒で.....。それに誰も殺さずに、忠実に守ってくれた.....!」


涙がこぼれ、ポタポタと護のほっぺに落ちる。


「護言ったよね.....。どこかで終止符を打たないと戦闘は終わらない。」


バンダナをはずし、フードを脱ぐ。


「今、終わろう。もう身内が傷つくところなんて見たくないの.........。」


護は優しく微笑んで、喜々の涙を拭いた。



      最終戦


     護VS喜々


   勝者    喜々


   死者    0人
< 26 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop