サヨナラまでの距離
「てか舞、明日からゼミ合宿だっけ?」
「そうだよー。五時起きとかありえない」
「ちゃんとケータイのアラーム、セットしと けよ」

なぜか舞は目覚まし時計の音では起きることができなくて、ケータイのアラームだと目を覚ますことができるのだという。
意味も理由も分からないけれど、その姿を実際に見たことがあるのでそれが嘘ではないということも知っている。

「寝坊したらやばいぞー?」
「分かってるよー」

いつもなら「じゃあ研一が電話で起こして」とか言ってくるのだけど、今日は素直な答えが返ってくる。

舞のその頼みをいつも面倒だと思っていたけれど、いつもとは違うその返事になんだか少しだけ寂しさを感じてしまう。

でもこれからはそれが当たり前になっていくのだ。いちいち悲しんでなんていられない。
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