それでもキミをあきらめない




殻はなかった。


それは、わたしが勝手につくり出していただけだった。


目に見えない、実体すらない殻のなかに、

自分から閉じこもっていたにすぎない。



人と接することに怯えて、自分からバリアを張っていたんだ。



なかった。


殻なんて……



はじめからどこにも、
存在してなかった――




涙ににじんだ視界で、指先に触れた高槻くんの体温だけが鮮明だ。



わたしの手をきつく握り締めて、高槻くんが言う。



< 278 / 298 >

この作品をシェア

pagetop