幸せにする刺客、幸せになる資格
「そう言えばさ」
『ん?』

見晴らしのいい東京の夜景を眺めながら、傍らの椅子で背後からノリに抱き締められている格好。

「私が過去のことを話し始める前に健吾さんに耳打ちされてたのは、何か言われたの?」

私の問いかけに、ノリは"フッ"と笑った。

『"途中で彼女を抱き締めたくなっても我慢して、手を握る程度にしておけよ"って言われた』

健吾さんはきっとノリの性格を見抜いてそんな事を言ったんだろうな。

『でも明日は、手を繋ぐことすらできないかな』

明日はいよいよ、ノリの実家に行く。
どこまで雪解けをご両親と迎えられるか分からないけど、私はノリを信じてついて行くだけ。

ホテルのベッドはフカフカだ。
そんなところでノリに優しく愛されている私は、幸せ者だ。

明日どんなことがあろうとも、私と大和くんはノリの一番の理解者。
良い結果になることを願わずにはいられなかった。
< 62 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop