初恋の絵本
思い出のハンバーグ




夢を見た。

まだお母さんがいた頃の夢。



これは夢だって分かっているのに
お母さんがいるから。

なんだあ、生きてたのかあって。

お母さんがいることが
当たり前だと思い込んだ。



「お母さん。今日ね、ハンバーグが食べたいな」



そうだ。

私、けっこうワガママだったんだ。

食べれないものがたくさんある
偏食の多い子どもで。

お母さん、困ってたな。



もう大丈夫だよ。

好き嫌いなくなったの。大分ね。

好き嫌いしてたら、
食べるものがなくなったから。



お母さんみたいに
嫌いなものを美味しく料理
してくれる人がいるから。

だから、もうワガママ言わないから。

ワガママじゃなくなったから。




お母さん。

帰ってきてよ。




嬉しい夢を見たはずなのに
哀しい気持ちになるのは
いつものこと。

お母さんの夢を見ると、
もっとしっかりしなきゃって思う。




< 93 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop