赤い流れ星3
「野々村さん、どうかされたんですか?」

「え…?いえ、私は別になにも…」

「でも……」

話しかけた時に、テーブルに材料が運ばれて来て、俺は話すタイミングを失った。
店員が準備をする様子をぼんやりと見守りながら、俺は頭の中でもう一度さっきのことを考えていた。
しかし、考えれば考える程、野々村さんは俺の計画に気乗りしていないように思えた。



「……野々村さん、さっきの続きなんですが…
あの…やっぱり、野々村さんは俺の考えに反対なのでは…?」

店員が引っ込むと、俺はすぐに話を切り出した。



「い、いえっ!そういうわけじゃないんです。
ただ……あ、あの…ご両親から結婚話をすすめられてそれがいやでこちらに来られたわけですから、そ、その…そういうことをされたら美幸さんが嫌がられないかなって…」

彼女の話に、俺はようやく得心した。
野々村さんは、美幸の気持ちをこんなにも考えていてくれたのかと、とてもありがたく思った。




「そうだったんですか…
でも、心配しないで下さい。
俺は無理に結婚をすすめるつもりはありませんから。
ただ、あいつは友達という程の友達もいないし、たまに食事に行ったり、遊びに行ったりする相手もいない。
もちろん、女性の友達でも良いんですが、あいつも年頃だ。
どうせなら良い男と素敵な恋愛をしてほしいとそう思っただけで…」

「あ、あの…青木さん!」

「な、なんですか!?」

突然、身を乗り出すようにした野々村さんは、俺がたじろぐ程の真剣な視線を向けた。



「わ、私じゃだめでしょうか?」

「だ、だめって、なにがです?」

「で、ですから、美幸さんの友達に…」

「……は?」

それは、とても意外な申し出だった。
何を言い出すのかと思えば、野々村さんは美幸の友達になりたいと言い出したんだ。



「そ、それは、こちらとしてもありがたいですが…」

「本当ですか!?
ありがとうございます!
私の方がうんと年上ですし、話が合わないこともあるかもしれませんが、私、美幸さんの好きなアニメのことも勉強します!
美幸さんに嫌われないように、頑張ります!」

「……はぁ……」

俺には彼女の気持ちがよくわからなかった。
美幸のことを気にかけてくれているのはわかるけど、これほど熱心に友達になりたいと言ってくれるなんて…



「あ、青木さん、そろそろ煮えて来たみたいですよ。」

「はぁ、どうも……」

俺は、もやもやした気持ちのまま、仕方なく鍋料理に手を着けた。
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