赤い流れ星3
side 野々村美咲




(疲れた……)



家に戻ってお風呂に入り、何もかも洗い流して私はいつもの私に戻った。
タカミーさんに綺麗に結ってもらった髪も今は無造作に一つに束ね、いつもよりずっと綺麗に描いてもらったメイクもすべて落として、いつもの地味な私に戻った。



(まるで、魔法が解けたシンデレラだわ。)



確かに今日は楽しかった。
恥ずかしさをこらえて若い格好をしていったけど、意外な程、皆さんの反応も良かったし、青木さんと鍋をつついてひさしぶりに顔を見てお話も出来て…楽しくないはずがない。
だけど……最後がまずかった。



アンリさん…とっても綺麗でスタイルが良くて……
美幸さんのお話ではお友達だってことだったけど、KEN-Gさんが彼女さんか?と訊ねられた時、そう言っても良いかもしれないって……青木さんはアンリさんの肩を抱いて、はっきりとそうおっしゃった。



あの時のことを思い出すと、やっぱり心が痛い。
私には端から希望がないことはわかってる……
まして、アンリさんはあんなに若くてお綺麗な方……
並ばれた青木さんとアンリさんは、絵に描いたようなお似合いのカップルで……
それなのに、思い出すと、また心が苦しくなった。

もしかしたら、タカミーさんもこんなお気持ちだったのかしら?
それがあんな酷い言葉に変わったの?



「あんたなんてただの性の捌け口よ!」



本当にそうなのかしら?
でも、それにしたって、あんなこと言っちゃいけない……
そう思った時、昔のことが頭をかすめた。

私は身体だけじゃない……お金まで取られてた……
それでも好きな人ならまだ良いけれど、私は特に好きでもない相手にそんなことを……

愚かな昔の自分を思い出すと、恥ずかしくて情け無くて、涙が出そうになって来る。



私は滅入る気持ちを洗い流すかのように、冷たい水を一気に飲んで部屋に戻った。


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