赤い流れ星3




「これはどうかな?」

「それだったら…ほら、こっちなんてどうですか?
あの服とよく合いますし、可愛いと思いますよ。」

私は、淡いピンクのカジュアルなショートブーツを差し出した。
一見するとスェードだけど、偽物だからお値段もリーズナブル。



「……靴までピンクってやりすぎじゃない?」

美幸さんは、あまり気に入られていないようだ。



「そんなことないですよ。
パンツは黒なんですから……」



食事をした次の日、私はまた美幸さんからの呼び出しを受けた。
なんでも、靴を買いたいから付き合ってほしいとのことで……
確かに、美幸さんのはかれてるスニーカーはかなりくたびれていたし、先日のあの服装には似合わない。
それに、私も黒か紺しか持ってないし、新しい靴はずいぶん長い間買ってないから、一緒に買うことにした。



「じゃあ、野々村さんもピンクにする?」

「えっ!?わ、私は……」

「これとおそろいはどう?」

「えっと…私のはちょっとデザインが、ほら……
だから、そういうカジュアルのじゃなくて普通のパンプスの方が良いと思うんです。」

「あ……そっか…
そうだよね。
じゃあ……」

美幸さんは私が差し出したショートブーツを片手に、パンプスの売り場の方へ歩いて行かれた。
私の靴を探して下さるつもりなのだろう。



「あ!野々村さん、これ、どう?」

美幸さんが選ばれたのは明らかにあの服とは合わない浮かれたピンクのパンプスだった。



「う~ん…ちょっと、それはピンクの色味が違いますね。」



美幸さんは意外にも私が選んだショートブーツを買われ、私はその店では都合の良いものはみつからず、他にも何軒か探してみたけど、結局、気にいるものがなく……
美幸さんを連れまわすのも気がひけて、私はもう新しい靴を買うのは諦めた。



(またそのうち買えば良いわ。)



「じゃあ、いつものファミレスでごはんでも食べますか?」

「う~ん…でも、靴買ったからお金ないし……」

「この前はおごっていただいたから今日は私が出しますよ。」

「で、でも、あれは兄さんが……」

「良いから行きましょう!」
< 206 / 761 >

この作品をシェア

pagetop