赤い流れ星3
「野々村さん、いろいろとありがとうね。
野々村さんも早く取りかかって。
私は……あ、そうだ。
純平君に連絡しとこうかなぁ…
昨夜はバタバタしてて、連絡出来なかったんだぁ……」

「じゃ、じゃあ、私…着がえてきます。」



ついに怖れていた事態がやって来た。
どうせ、お店に行ったらバレるんだけど、出来る事なら、二人っきりでいる今はバレてほしくない。
自室に戻った私は、KEN-Gさんに助けを求めることにした。



「あ、KEN-Gさんですか?」

「おぉ、野々村さん。
わしも、ようやく今日の用事が済んでな…今連絡しようと思ってた所なんじゃ。」

「そうなんですか。
だったら、KEN-Gさん……今、ひかりさんに電話して、なんでも良いからとにかく長い間話してもらえませんか?
あ、私から連絡があったということは黙っておいて下さい。」

「なんだかわからんが……とにかく長話をすれば良いんじゃな?
あい、わかった。」



KEN-Gさんがものわかりが早い方で助かる。
私はひやひやしながら、でかける準備にとりかかった。
とはいっても、服を着替えて髪や顔に少し手を加えるだけだから、そんなに時間はかからない。
そもそも私はおまけみたいなもんだから、特におしゃれをする必要もないんだもの。



(私みたいなおばさん……何を着たってさほど変わらないわ……)



タカミーさんに怒られそうだけど、現実だもの……
さっき触った美幸さんの肌と自分の肌は明らかに感触が違う。
私の肌にはもうあんなハリはない。
髪だってそう……
美幸さんの髪は太くてつややかでとても量が多い。
私は、元々細くて猫っ毛だから、なんだかうらやましく思えてしまった。



(つまらないこと考えてないで、早く行かなきゃ……)



部屋を出かかった時に、さっき美幸さんが言われてたスカーフのことを思い出して、引出しに目を遣った。



(スカーフも使うのはひさしぶり……
これも、みんな大昔のものだもの。
……それにしても、私って物持ちが良過ぎるわね。)



こんな古い物……時代遅れも甚だしいけど、昔からけっこう好きだった花柄のスカーフを選んで、私は部屋を後にした。
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