赤い流れ星3




「ごめん。
僕、土曜日はクライアントと約束があるんだ。
ほら、例の…」

「例の」というマイケルの言葉で相手のことを思い出し、俺は大きく頷いた。
そうだ…マイケルのことをとても気に入ってる化粧品会社の女社長のことだ、と。



俺は、早速、その日の夕食の席で、土曜日の計画を話した。
まだはっきりと決めたわけではなかったが、たとえば、テーマパークで朝から思いっきり遊んで、日が暮れたらこっちに戻って来て、いつもよりちょっとマシな店で夕食を採り、その後は飲みに行きたい所だが、美幸がいるからカラオケあたりにいくのはどうかと…
そんな予定を頭に思い描くと、俺自身、そのことが少し楽しみに思えてきた。
ところが、土曜日に皆で出掛けないかと俺が言った途端、マイケルにそれを断わられ、俺の高揚していた気分は俄かに下がった。



「あぁ……そうだったな…
だったら、また今度に…」

「いや、約束してるのは僕だけだから、皆で行って来てよ。
早くに済んだら、僕もすぐに駆け付けるから…
他の皆は特に用事はないんでしょ?」

マイケルがそう言うと、美幸とアッシュが同時に顔を見合わせた。
それも、どこか困ったような表情で…



「なんだ、アッシュ…その日は用があるのか?」

「え…?用っていうわけじゃあないんだけど……」

歯切れの悪い返事をして、アッシュはちらちらと美幸の方を見る。



「もしかして……美幸と用があるのか……?」

俺がそう言うと二人はまた顔を見合わせ、次の瞬間、美幸は素早く首を振り始めた。



「ち、違うよ。
わ、私はいつも暇だよ。
ただ、土曜日は野々村さんと会おうかなぁと思ってて…
会うって言ったって、ほら、近くでランチでも一緒にって感じで、だって、私達、いつも暇だから……」

「だったら、野々村さんも呼べば良いじゃないか。」

「え………
あ……そ、そうだね……うん、そうしよう!
土曜日は皆で遊びに行こう!」

どこか不自然な笑みを浮かべ、美幸がそう言った。
もしかしたら俺と遊びに行くのがいやなのか、それとも野々村さんとなにか特別な話でもあったのかと気にはなったが、俺の思い過ごしだろうか…?
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