赤い流れ星3

side 和彦





「本当に申しわけありませんでした。」

「いえいえ、そんなたいそうなことではありませんし、お気にならさないで下さい。」

どうしても気になってたまらず、俺はまた野々村さんを誘った。
誘いを断られることはなかったし、特に態度にも変わりは無い。
なぜだ?
どういうことだ?
俺はますます混乱した。



「昨夜はなんだかテンションが上がってしまって…」

「私ももう少しお酒が強かったら良いんですが、全くダメですからお付き合い出来ずすみません。」

確かに、野々村さんは酒に弱い。
バーでもアルコールの入ってないカクテルを何杯か飲んだだけのはずだ。
だから、酔っているはずはない。
酔った野々村さんは人格が変わるから、それなら昨夜のようなことがあってもまぁ、不思議では無いかもしれないが、普段の野々村さんなら、俺が不埒なことをしようとしたら拒むんじゃないだろうか?
じゃあ、俺は力づくでやってしまったんだろうか?
いや、そんなことがあれば、野々村さんの態度がこんなに変わらないはずがない。
いくら人の好い野々村さんでも、怒るはずだ。
俺を嫌いになるはずだ。



考えれば考える程、わけがわからなくなってくる。



「な、何か?」

「え?」

知らないうちに、俺は野々村さんを見つめ続けていたようだ。
ほんのりと頬を染めた野々村さんが、どぎまぎしていた。

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