赤い流れ星3
side 和彦
*



「カズ…どうかした?」

「え…?何が?」

「だって…さっきから携帯ばっかり見てるから…」

「え……あ……あぁ……
じ、実は……ちょっと、携帯の調子が悪いんだ。
が、画面が急に落ちたりするから、気になって……」

よくもそんな大嘘を思い付いたものだと、我ながら呆れた。
そもそも、俺はどうしてそんなことを訊かれたくらいでこんなに焦ってるんだ。
馬鹿馬鹿しい…



「カズ、その携帯どのくらいになる?」

「そうだな…一年と…少し経ってるかな…?」

「じゃあ、そろそろ替え時かもしれないね。」

「一年でもう変えなきゃいけないのか?」

「でも、電池の保ちも悪くなって来てるんじゃない?」

「まぁ、そう言われればそうかもしれないな…」



とりあえず、うまく誤魔化せたことに俺は安堵した。
それから、さして関心のない携帯の話が延々と続いたのには辟易したが、仕方がない。




「あ…もう、こんな時間か…
今日は少し飲み過ぎたようだ。
早めに休むよ。」

話の切れ目に俺はそう言うと、リビングを後にした。
部屋に戻ると、早速パソコンのメールをチェックしたが、野々村さんからの返信はそこにも入っていなかった。



(なぜだ……?)



送信出来ていなかったのではないかと、送信メールをチェックする。
俺がさっき送ったメールは、送信済みになっていた。
しかし、パソコンも所詮は機械だ。
誤作動というものもあるだろうし、サーバー側のトラブルかもしれない。
もう一度送信すべきか悩みながら、俺は送ったはずのメールをもう一度読み返した。
特におかしな所はない。
野々村さんを怒らせるようなことも書いてはいない。
では、なぜ?
いつもならすぐに返信をくれる野々村さんは、なぜ、今日に限って返信をくれないんだ?
俺は、たまらずメールを送った。
さっきのメールに書き忘れたことがあったと、どうでも良い事をわざわざ書いて…
だが、しばらく経ってもやはり返信はなかった。



(……なぜなんだ!?)



熱いシャワーに打たれながら、俺は自分に言い聞かせた。
きっと、何か用があったか、メールに気付いてないだけだろう。
こんなこと、気にする程のことではない。



だが、浴室から出ても、さっぱりしたのは身体だけで気持ちは少しもさっぱりしてはいなかった。
返信も届いていない。
どうにも、堪えきれなくなった俺は野々村さんに電話をかけた。
「メールソフトが不調で、もしかしたら届いていないんじゃないかと思って…」
そんな言い訳を俺は頭の中で繰り返す。



呼び出し音に、不思議と鼓動が速まる。
やっと、繋がった…!
そう思ったら…



「おかけになった電話番号は…」

無機質なアナウンスが流れ出した。
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