赤い流れ星3




情け無い事に、結局、俺は朝までよく眠れなかった。
あの後も、野々村さんに電話したが、やはりあのアナウンスは変わらないままだった。



二度目だったか、三度目だったかの電話の後で、俺はようやく気が付いた…

そうだ…出ないのなら、呼び出し音が鳴り続けるはずだ、と。
つまり、野々村さんは本当に電波の届かない所にいるか、電源を切っている。
だが、電波の届かないような所は、このあたりでは思いつかない。
一昔前なら地下は電波が届きにくかったりすることもあったが、最近は、地下でも問題ない。
野々村さんは、電池が切れてそのままなんてことはまずないし、そうなると、自らの意志で電源を切っているということに他ならない。



つまり、電源を切らなくてはならない状況…
もしくは、電話に邪魔をされたくない状況…



俺の頭の中を一瞬、大河内さんの顔がかすめて消えた。
昨日、大河内さんは、夜から用があると言っていて…
アッシュ達は、タクシーに乗って帰って来たが、野々村さんとは別のタクシーだったと言っていた。
アッシュ達の手前、別々にタクシーに乗って帰るふりをして、また大河内さんと……



(馬鹿な……)



俺は、つまらない妄想を払うように頭を振り、顔を洗うために部屋を出た。








「美幸…野々村さんとはうまくやってるのか?」

「え?うまくって?」

朝食の席で、俺はついそんなことを訊ねていた。



「だから……メールのやりとりとか、よくやってるのかってことだよ。」

「あぁ、それなら毎日やってるよ!」

「そうか……昨夜もしてたのか?」

「……え……?
う、うん、まぁね。」



美幸が急に瞳を伏せた。
なんとなく、様子がおかしい。



「おまえも野々村さんも夜更かしだから、けっこう遅くまでやりとりしてるんだろ。
昨夜も遅くまでやってたのか?」

「う、うん、まぁね。
ほら、今日は日曜だから、いつもより遅くなっても良いかなって感じで、ちょっと調子に乗ってね…」

「……そうか。」



なぜ、美幸はそんな嘘を吐く?
嘘を吐く必要なんてないじゃないか。

野々村さんに頼まれたのか?
夜遅くまで美幸とメールをしていたということにしてくれと…
だとしたら、それはなぜだ!?
普段と変わりなく、家にいたというアリバイのためか…?



――本当は家にいなかったから…?

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