嘘つきラビリンス
いつもなら余韻を楽しむようにベッドで絡んでるのに。

今日の彼は少し違った。

違ったといえば待ち合わせしたときから変だった。

こんな時、どうしてだか分かってしまう。

最悪な未来を。

ひとりでさっさとシャワーを浴びてシャツを着始めた彼。

そして、その彼がネクタイを締めながらまだベッドに横たわる私を見下ろした。

言葉を紡ぐ唇がまるでスローモーションのように動くのを見て、私の心臓はドクンと大きく揺れた。


「悪いけど、別れてくれ」


さっきまで私を抱いていた男が口にする言葉に私は呆気にとられながらも心のどこかで『やっぱり』った思った。

だけど、突然の言葉にどう対処していいか分からず、私は間抜けに彼を見上げるだけ。


「俺、結婚することにしたんだ」


常務の娘とお見合いしたらしい。

なんて根も葉もない噂を聞いたのは先月だったっけ?
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