嘘つきラビリンス
「俺にとっていい話なんだ、恋羽なら分かってくれるだろう?」


意味が分からない。


「それと、俺とつきあってたことはこれからも内緒で……」


そう言って彼が差し出したのは少し厚みのある封筒。

あぁ、ドラマなら間違いなくこの中身はお札だ。

彼とは同じ会社で、別に社内恋愛禁止って訳じゃないけど、つき合ってるのは隠してた。

思い返せばそれを提案してきたのは彼からだった気がする。


「でも、俺は今でも君のことが好きなんだ。もしも、君さえ良ければ俺たちの関係はこのままで――」

「馬鹿にしないでっ!!」


そう叫ぶことの出来た自分を誉めてあげたい。

きっと睨んだって私は裸で彼はスーツ。

本当なら走ってこのラブホの部屋から飛び出したいけどそれすら出来ない。

すると彼は大きくため息をついた。


「それなら仕方ないね、さよなら恋羽」


そして、彼はあっさりと私に背を向けた。
< 3 / 100 >

この作品をシェア

pagetop