嘘つきラビリンス
「ねぇ、トーマ君」

「トーマでいいよ。昨日だってずっと呼び捨てだったし」

「……」


クスクス笑う声が気に入らない。

あぁ、もう二度と記憶無くなるまで飲むなんてマネは止めよう。


「どうして私なの? ホストなんでしょう? 彼女なんて何人もいるんじゃない? その彼女に束縛されたくないなら自分で部屋を借りればいいじゃない?」


疑問に思ったことをぶつけるとトーマはふわりと笑った。


「うん。こんな仕事だから彼女と暮らすのはちょっと辛い。毎日が修羅場だからね。だから僕だって部屋を借りたいんだけど――」


彼は少し困ったようにふわふわな髪をかきあげる。そして、


「僕、まだ未成年だから勝手に家を借りれないんだよ」

「……はい?」


待って。今、なんて言った?


「あ、これ、お店にも内緒にしといて?」


人差し指を唇に当ててニコリと笑うトーマ。


「――って、えぇ!? みみみみみみ、未成年!?」

「あ、でも結婚は出来る18だから」

「はぁ――!?」


大きな口を開けて叫ぶ私に、トーマはやっぱりクスクス笑うだけだった。
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