Only
「俺さ」
大地があたしの肩から手を外して、柵の方に歩いてく。
「輝がマネージャーとして部活に来てくれた日からずっと、可愛いなって、気になってた」
どこを見るでもなく。
空を見上げながら大地は続ける。
「ただ…光に先越されてさ。でも2人とも幸せそうで、悔しい気持ちの反面、良かったなとも思った」
「…」
「2人が付き合った次の日。アイツは俺んとこに報告しに来たんだ。一応、俺の気になってる人を知ってたからさ、光は」
…そういえば。
付き合った次の日の朝、大地が「おめでとう」って言ってたっけ。
「あの時に言ったんだ。『輝に何かしたら、いくらお前でも容赦しねーぞ』って。だから俺は、容赦しない」
「…何を?」
「輝のこと、アイツになら獲られてもいいなって思って、譲ったから。今度は遠慮しない」
迷いのない意思が、痛いほど伝わってくる。
…大地。
あたしは。
まだ、光を諦めきれてなくて。
それでも、待っててくれるというの?
こんなあたしを…