さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
商店街の特集となってはいるが、紙面の大半は父の紹介といってもいい。

「恥ずかしくて、死にそうだ」
と言いながら、父は、奥の居間に引っ込んだ。

布団をしいて、倒れ込む音がした。


「これ、本当のことなの?」

父が、実家の和菓子店を飛び出して、ケーキ屋で修業した、ということは、聞いたことがある。
けれども祖父との確執など、まして、自分が生まれたときに和解したことなど、あたしには初耳だった。

「まあ、嘘は書いてないわね」

と、母は答える。

「かなり大げさだけど、全部本当だわね」

「ふうん……」

< 117 / 211 >

この作品をシェア

pagetop