さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
昨日から不思議に思っていたことを、尋ねてみた。

「あの記事の中には、あたしが知らないこともいっぱいあったんですけど、よくウチの父が、あんなことを話しましたね」

「あんなこと?」

「父と祖父の対立のこと……
結婚式にも、口をきかなかったとか、
あたしの誕生の時に、祖父が『うまい』と言ったとかいう話です」

「はい」

みどりさんは、うなずいた。

「お父さんは、全部話してくれましたよ……
それは、たぶん……」

「それは、わたしが、お父さんのことを好きになったから」

「あの、鬼オヤジを、ですか?」
(誰があのオヤジを好きになるの!)

「鬼オヤジ? お父さんは、すてきですよ」

あの日の、キャー、ステキ、というみどりさんの叫び声がよみがえってきた。

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