さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「いや、実は、サンタクロースになって、園児から『サンタさん、サンタさん』なんて言われて、うれしくて」

「園児がひとり、抱きついてきた。その子をだっこしてやったら、他の子もやってきた」

オチを予想して、実可子はこっそり笑った。

「その園児が、ひげを引っぱったんだ」

ビンゴ! 予想どおり。

「なんだ、ケーキ屋のおじちゃんだあって……」

母とあたしは身をよじって笑った。

「その時、オレは悟ったね。ああ、オレはケーキ屋のおじちゃんだったなあって」

さばさばとした口調だった。

「カッコつけることはないな。気張らなくて、自然にやるさ」

「じゃ、あのげんこつスシュークリームは、やめちゃうの?」

「いや、やってみるさ。お客の評判が悪ければ、すぐやめればいい」


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