さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
父が保育園から帰ってきた。

「おかえり」といっても、返事がない。

黙って、店の例の重蔵の表紙のパネルをつかんで、外した。

「どうしたの?」

「別に。ただ、自分を見失っているな、と思って、な」

あたしには、なんとなくわかった。

さっき父が言っていたではないか。

「実可子は、自分らしさを見失っている」と。

その言葉は、まさしく例の表紙騒ぎ以来の、父の姿そのものだと気付いたのだろう。

でも、何があったのだろうか?

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